のどかな田園風景の広がる土地に建つ住宅を紹介します。設計を手がけたALTS DESIGN OFFICEが拠点を置く水口に建てられたその住宅は近隣住宅と一線を画すモダンな佇まいが目を惹きます。2種類の黒いボリュームが組合わさった建物は、田園風景に対してその存在感をアピールすると共に、将来的にその場所に溶け込んでいくといった可能性が期待されて計画されました。まずは外観を見てみましょう。
田園に向って大きく設けられた2階部分の開口が印象的です。低いながらも塀に囲まれた1階ではなく2階に主要な生活空間を配置しました。木板の壁張りによって柔らかな雰囲気を加えたテラスが単一になりがちな外観に異なる表情を与えています。
モダンでマッシブな黒のボリュームですがピロティを設けたり高さを控えめにすることで威圧的な存在を回避しています。また異なるマテリアルを採用しそれぞれの素材を生かしたデザインが周囲に溶け込むような緩和的な表情をもたらしています。
2階の主要な生活空間はオープンな間取りによって開放的な空間づくりがされています。様々な素材を生かしたインテリア計画は至ってシンプルな空間構成に映える造作家具やアンティーク家具がセンス良く配置されています。
リビングコーナーは一段下げることで空間に間接的な閾を作っています。ビンテージ感覚のガラス入りの建具が空間にさらに奥行きと多様性をもたらします。木のナチュラルな色合いやレザ—のテクスチャーが調和したインダストリアルな雰囲気のリビングですね。
ガラス入りの仕切りの向こうはちょっとした図書コーナーが設けられました。おしゃれなディスプレー棚を壁に設け、小さいスペースを有効に利用したアイデアです。リビングからの採光が落ち着いた雰囲気を醸し出し、落ち着いて本が読めそうですね。
ダイニングを見てみましょう。ダークな木製のダイニングセットとキッチンの背面の配色を揃えることで、アンティークタイルを貼った壁が引き立ちます。セミオープンにすることで、生活感を見せずに機能性を発揮したキッチンですね。
洗面コーナーはオープンな配置に計画され、素材を生かしたモルタルの台座に陶器の洗面ボウルが埋め込まれたモダンでユニークなデザインです。壁に造作によって設けられた収納がシンプルかつ機能的ですね。
玄関廻りです。ここにもモルタル製の洗面台が設けられています。外から帰ったらすぐ手を洗いましょうという習慣からでしょうか。無骨なモルタルの素材を生かしたインテリアの一部になる洗面台ですね。大きめに確保した三和土にはモルタル製のベンチや直接アプローチできるワードローブを設け、デザイン性と機能性を兼ね備えた玄関です。
ビンテージ感のあるフローリングとモルタルやアイアン製のエレメントが程よく調和した空間は時を経て、さらに味のある豊かな空間へと変化し、住む人にとって愛着のある場所となっていくのではないでしょうか。